
「自社ブランドのECサイトで定期購入を始めたいけれど、WordPressで本当に運用できるのか。」
「ASPカートとの違いも分からず踏み出せない」
そんな悩みを抱えていませんか?
プラットフォーム選びは将来の収益やコスト、セキュリティに直結します。
本記事ではWordPressで定期購入サイトを構築する具体的な方法から、ASPカートとの徹底比較、そして事業を成功に導くためのポイントまで必要な情報をすべて網羅しました。これを読めば自社に合う選択肢と次のアクションが見えるはずです。
目次
EC市場の成長と定期購入モデルの重要性
定期購入(定期便)は一度きりの販売で終わる「フロー型」ではなく、継続的な収益を生み出す「ストック型」のビジネスモデルです。2024年に経済産業省が発表した調査によると、日本の物販系BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は15兆円を超え、EC化率も年々上昇を続けています(※1) 。このように市場が成熟し新規顧客の獲得競争が激化するなか、既存顧客の維持による収益安定化と需要予測の精度向上は大きな武器になります。実際、「新規顧客の獲得コストは既存顧客維持の5倍かかる」と言われており(※2)、定期購入モデルで既存顧客との関係を深めることは費用対効果の面でも有利です。
事業者側の5つのメリット:安定収益とLTV向上
- 収益の安定化と予測可能性の向上:毎月決まった収益が見込めるため、キャッシュフローが安定します。
- LTV(顧客生涯価値)の最大化:一人当たりの顧客から得られる生涯収益が大幅に向上します。
- 顧客データの蓄積と活用:継続的な利用データの蓄積により商品開発やマーケティング施策の精度を高めることが可能です。
- 在庫管理・生産計画の効率化:将来の需要予測が立てやすくなるため、過剰在庫や品切れのリスクを低減できます。
- マーケティングコストの最適化:リピート顧客が増えれば新規依存が下がり、広告効率が改善します。
顧客側の3つのメリット:利便性と特別感
- 買い忘れ防止と注文の手間削減:毎回の注文手続きが不要で、時間と手間を節約できます。
- 経済的なメリット:通常購入よりも定期割引や送料無料などで金銭的なメリットが多くあります。
- 在庫切れの心配がない:人気商品や消耗品でも自動的に確保されるため、必要なときに手元に届く安心感があります。
「定期購入」と「サブスクリプション」の違い
「定期購入」と「サブスクリプション」は混同されがちですが、厳密には異なります。「定期購入」は主に特定の商品(モノ)を定期的に届けるモデル、「サブスクリプション」は、商品だけでなくサービスやコンテンツなど利用権全般を一定期間提供するモデルです。自社ビジネスの形態に合わせて適切な用語を選ぶと良いでしょう。
WordPressで定期購入・定期便ECサイトは構築できる?
3つの主な方法
結論から言えば、WordPressで定期購入・定期便に対応したECサイトを構築することは十分に可能です。世界で最も利用されているCMSであるWordPressは、その豊富なプラグインと高いカスタマイズ性を活かすことで、本格的な定期販売システムを実装できます。主な実現方法としては、大きく分けて3つのアプローチが考えられます。
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EC機能を持つ
プラグインの導入
WordPressサイトにカートや決済機能を追加し、定期購入専用の拡張プラグインを組み合わせる方法です。
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外部のASP
カートシステムと連携
商品購入や決済部分をShopifyやecforceなど高機能なASPカートに任せ、WordPressはブログ・メディアとしての集客機能に特化させる方法です。
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独自開発
(フルスクラッチ)
WordPressを土台に完全オリジナルのEC機能を開発する方法です。特殊な要件がない限り一般的には推奨されません。
最も一般的で現実的な方法は「EC機能を持つプラグインを導入する方法」で、比較的低コストかつ柔軟にサイトを構築できます。本記事ではこの方法を詳しく解説します。
WordPressとASPカートの比較:どちらが自社に合うか?
定期購入ECを始めるとき、多くの場合、はじめに検討される選択肢はShopifyやecforceのようなASPカートシステムでしょう。専門知識がなくてもすぐに販売を始められる手軽さと安心感は確かに大きな魅力です。
しかし、WordPressを活用した構築の場合、独自のブランド世界観を追求したい、コンテンツマーケティングとECを密に連携させたい、長期的な運用コストを抑えたい、といったASPカートを上回るメリットをもたらすことがあります。特に定期購入モデルでは、単なる販売だけでなく、顧客との関係を育てるための情報発信やストーリーテリングが重要になります。また、すでにWordPressで自社サイトを運用している場合、そのまま販売機能を追加できるのも大きな利点です。 新たなカート契約や別ドメインの立ち上げが不要なため、ブランドの世界観を保ちながら低コストでECを統合できます。
どちらを選ぶかは、事業フェーズ・運用体制・コスト許容度・カスタマイズの自由度によって異なります。ここでは、実際の選定基準に基づいて、WordPressとASPカートそれぞれの特徴を整理します。
WordPressで運営するメリット・デメリット
メリット
- 高いカスタマイズ性:テーマやプラグインが豊富に存在し、デザインの自由度が非常に高いです。ブランドの世界観を細部まで表現したい場合に最適です。
- 低コストでの導入・運用:初期費用はサーバー代とドメイン代、有料プラグインの購入費程度で済みます。ASPカートのように売上に応じた販売手数料がかからないため、利益率を高く保ちやすい点も大きなメリットです。
- コンテンツマーケティングとの親和性:世界No.1のCMSであるWordPressは、SEOに強く、オウンドメディアを運営して集客し、そのままECサイトへ誘導するという戦略をシームレスに実現できます。
デメリット
- セキュリティリスク:更新の放置や不適切な設定、古いプラグインの利用があるとリスクが高まります。本体・テーマ・プラグインの継続的アップデート、バックアップとセキュリティプラグインの併用といった基本対策が重要です。実務的な手順はWelcart公式の「WordPress ECサイトのセキュリティ対策完全ガイド」(※3)で詳しく解説されています。
- 専門知識の要求:初期設定やカスタマイズ、トラブル対応には、ある程度の知識が求められます。専門知識がない場合、学習コストがかかるか、外部の専門家に依頼する費用が発生します。
ASP型ECカートシステムを利用するメリット・デメリット
メリット
- 手軽さと導入の速さ:サーバーの準備やシステムのインストールは不要です。アカウントを登録し、デザインテンプレートを選んで商品を登録すれば、すぐに販売を開始できます。
- 充実したサポート体制:操作方法がわからない時やトラブルが発生した際に、電話やメールで専門スタッフのサポートを受けられます。
デメリット
- 月額費用と販売手数料:初期費用は無料の場合もありますが、月額のシステム利用料と、売上に応じた販売手数料が発生します。
- カスタマイズの制限:デザインは提供されているテンプレートの範囲内での変更に限られることが多く、WordPressほどの自由度はありません。独自の機能を追加することも基本的にはできません。
- システムへの依存:サービス提供会社の仕様変更や、万が一のサービス終了といったリスクがあります。また、他のプラットフォームへのデータ移行が難しい場合もあります。
比較表:あなたに合うのはどっち?目的別選び方ガイド
| 比較項目 | WordPress (Welcart / WooCommerce など) | ASPカート (Shopify / ecforce など) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数千円〜数万円程度 (サーバー・ドメイン・有料プラグイン等) | 無料〜十数万円程度 (プラットフォームやプランによって幅が大きい) |
| 月額費用・手数料 | サーバー費+一部プラグイン費 売上連動の販売手数料なし (決済手数料は別) | 月額利用料+販売手数料あり (プランと売上に依存) |
| カスタマイズ性 | 非常に高い テーマ/プラグイン/独自開発で柔軟に拡張 | 制約が多い テンプレート・アプリの範囲内 |
| コンテンツ/SEO | 強い ブログ・LP・ナレッジを一体運用し「読みながら買う」導線を設計しやすい | プラットフォーム依存 記事運用は可能だが拡張の自由度は相対的に低い |
| セキュリティ | アップデート・セキュリティ対策の“運用体制”が必須 | プラットフォーム側で標準的対策を担保 |
| 保守・運用 | 自社で継続的に対応 (更新/バックアップ/監視/検証) | ベンダーにお任せ 大規模アップデートも自動反映 |
| 実装スピード | 設計次第 要件が多いと時間がかかる | 速い 初期セットアップ→短期で販売開始 |
| 定期購入機能 | 拡張プラグインで実装 (例:Welcart+WCEX Auto Delivery 等) | サービスによって標準/拡張が異なる (Shopifyはアプリ追加で対応、ecforceは標準搭載など) |
| 既存サイトとの統合 | 既存WordPressにEC機能を追加可能 ドメイン/デザインを一貫 | 別ドメイン/サブドメイン運用 一体化は限定的 |
| ブランディングの自由度 | 高い (UI/導線・リッチ表現を細かく設計) | 中〜低 (テーマ/アプリ前提の範囲) |
| データ主権・移行性 | 高い (自前DB/エクスポートの柔軟性) | ベンダーロックイン傾向 移行コストが発生しやすい |
| 総合像 | コンテンツ起点で関係性を育てる型 コスト構造をシンプルにしたい場合に適合 | スピードと安心感を重視 非エンジニア主体で早く始めたい場合に適合 |
定期購入を実装する代表的なプラグイン2選
国内実績のある Welcart+WCEX Auto Delivery と、世界標準の WooCommerce+Subscriptions を比較します。両者の違いを押さえ、事業モデルや運用体制に合う選択肢を見極めましょう。
WCEX Auto Delivery
( Welcart )
買い切り制
27,500円
(税込、2025年10月時点)
WooCommerce Subscriptions
( WooCommerce )
年間サブスクリプション制
$279 / 年
(約41,850円 ※1ドル150円換算、2025年10月時点)
Welcart + WCEX Auto Delivery:国産ならではの安心感とサポート
「Welcart」は日本の商習慣(消費税計算・多様な決済・細かな配送設定)に強く、開発〜サポートまで日本語で完結するのが魅力です。ここに有料拡張プラグイン「WCEX Auto Delivery」を組み合わせると、定期購入運用に必要な機能をシンプルに揃えられます。初めてのEC運用でも、マニュアル/フォーラムを日本語で追える安心感があります。
主な機能と特徴
- 柔軟な配送サイクル設定:配送間隔・回数を設定し、そのルールに沿って受注が自動生成されます。30日/60日/3ヶ月など「日」単位、「月」単位で指定でき、“間隔の異なるコース別商品”を用意することも可能です。
- 初回割引・継続割引:「初回半額」(クーポン利用)や、回数ごとに商品を分けて金額設定を変えるなど継続を意識した設定が可能です。
- 変更・中止:管理画面では、数量変更、金額(単価)変更、到着日の変更、中止が可能です。決済失敗時は管理者側で再決済も可能です。
- 豊富な国内決済代行サービス対応:主要な国内クレジットカード決済サービス(SP.LINKS、SBペイメントサービス、ゼウスなど)との連携がスムーズです。QRコード決済にも対応しており、多様化する顧客ニーズに応えています。
- 帳票出力機能:納品書や請求書などの各種帳票を簡単に出力できます。
料金体系
Welcart本体は無料で利用できますが、定期購入機能を実現するためには有料の拡張プラグインが必要です。
- Welcart(基本プラグイン):無料
- WCEX Auto Delivery(定期購入プラグイン):27,500円(税込、2025年10月時点)※買い切り制(※4)
この他に、サーバー代、ドメイン代、必要に応じて有料テーマやその他の拡張プラグインの費用がかかります。ASPカートのように月額利用料や販売手数料は発生しません。
WooCommerce + WooCommerce Subscriptions:世界標準の柔軟性
「WooCommerce」はAutomattic提供の世界的ECプラグイン。公式拡張プラグイン「WooCommerce Subscriptions」を組み合わせると、定期購入に必要な機能を柔軟に構成できます。テーマ/拡張プラグインが豊富で、将来の拡張にも対応しやすいのが特長です。
主な機能と特徴
- 柔軟な課金モデルと顧客管理: 日・週・月・年単位での課金サイクル、初回手数料や無料トライアル期間の設定が可能です。また、顧客はマイページからプランの変更(アップグレード・ダウングレード)、休止・再開などを自身で行うことができます。
- 豊富な拡張性: 世界中で開発されている膨大な数の拡張機能(エクステンション)との連携が最大の魅力です。「WooCommerce Memberships」(※5)と連携して会員限定コンテンツを提供するといった、事業の成長に合わせた機能拡張が可能です。
- 高度な分析機能(要追加プラグイン): WooCommerceの標準レポート機能に加え、解約率(チャーンレート)や月間経常収益(MRR)といったサブスクリプションビジネスに不可欠な指標を分析するには、「Metorik」(※6)のようなサードパーティ製の分析ツール(多くは有料)を別途導入する必要があります。
料金体系
WooCommerce本体は無料ですが、定期購入機能と本格的な運用には有料の拡張機能が必要です。
- WooCommerce(基本プラグイン):無料
- WooCommerce Subscriptions(定期購入プラグイン):$279/年(約41,850円 ※1ドル150円換算、2025年10月時点)※年間サブスクリプション制(※7)
Welcartと異なり、こちらは年間更新ライセンスです。常に最新の機能とサポートを受けるためには、毎年ライセンス料を支払う必要があります。
成功する定期購入サイト運営の3つのポイント
このセクションでは、競合と差をつけ、顧客から長く愛される定期購入サイトをWordPressで実現するための、具体的かつ実践的な3つの成功法則を解説します。
01
信頼の基盤を築く、法規制への準拠
「意図しない契約」を防ぐことは罰則回避だけでなく、“安心して購入できる最終確認”を用意する攻めの施策です。最終確認画面に「定期購入であること」「支払総額」「契約期間」「解約条件・方法」を他情報と区別して明瞭に表示できる実装を選びましょう(※8)。利用プラグインが標準対応か、容易に対応できるかを事前に確認してください。
02
セキュリティとサイトパフォーマンスの
最適化
表示速度と安定性、そして基本的なセキュリティ運用は、定期購入の継続率に直結します。高速なWordPress最適化環境の採用と、アップデートを軸にした“保守体制”を整えることが重要です。セキュリティ運用の考え方は、本記事前半「セキュリティリスク」を参照してください。
03
LTVを伸ばす、コンテンツ×ライフサイクル運用
WordPressの強みを生かし、使い方・開発背景・Q&A・お客様の声といった一次コンテンツをカテゴリ/タグで体系化し、商品・会員ページへ自然に回遊させる内部リンクを設計しましょう。メールはサンクス、使い方ガイド、次回配送リマインド、休眠復帰クーポンを基本に、「悩み別の読み物 → 関連商品」や「同梱リーフレットと同内容の記事 → 追体験」といった相互送客を組み合わせることで、解約率を下げてLTVを伸ばせます。
定期購入ECを始めるなら「Welcart + WCEX Auto Delivery」がおすすめ
WordPressでの定期購入ECは、コンテンツ運用とECを一体で伸ばせるのが強みです。日本の商習慣へ標準対応し、日本語ドキュメント/サポート、買い切りの拡張(ランニングが膨らみにくい)という観点を総合すると、まずはWelcart + WCEX Auto Deliveryでのスタートが最もバランスの取れた選択肢です。導入後は、セキュリティとアップデートの基本運用を押さえつつ(運用負荷を抑えたい場合は、マネージド環境の Welcartクラウド(※9) という選択肢もあります)、一次コンテンツとメール連携を回すことで、解約率を下げてLTVを伸ばせます。
一方で、海外多通貨・複雑な料金設計・英語圏の拡張エコシステムを中核に据えたい場合は、WooCommerce系を検討するのが現実的です。自社の要件と成長計画を踏まえ、まずはWelcart構成で立ち上げ、必要に応じてプラグイン連携で段階的に拡張していく進め方をおすすめします。
よくあるご質問(FAQ)
初期費用・月額費用の目安は?
構成によりますが、おおよそ下記が目安です。
初期費用:5万〜15万円(有料テーマ・拡張導入・設定作業を含む想定)
月額費用:1,000円〜数千円+決済手数料(サーバー費用中心)
※ 売上連動の「販売手数料」は基本発生しないため、ランニングは抑えやすいのが特徴です。
既存のWordPressサイト(ブログ等)に後から定期購入機能を足せますか?
可能です。 Welcart や WooCommerce を追加・設定して実装します。
導入前に、サーバー性能(アクセス・商品点数に耐えられるか)や、既存テーマ/プラグインとの互換性、実装手順(バックアップ→テスト環境で検証→本番反映)を押さえると安全です。なお、定期購入に対応していない決済サービスもあるため、その場合は対応決済への切り替えが必要になることがあります。
カード情報の安全性は大丈夫ですか?
非保持化(トークン決済/代行会社側で保管)が前提です。WordPress側にカード番号は保存しません。
Welcart/WooCommerce と主要決済代行を連携すれば、安全な決済画面・トークン処理で運用できます。併せて、本体・テーマ・プラグインの更新、SSL、権限管理、二要素認証など基本のセキュリティ運用は必須です。
自分で保守が難しい場合でも運用できますか?
運用できます。 保守は外部委託やマネージド環境(例:WordPress最適化ホスティング「Welcartクラウド」)に任せられ、費用はかかりますが停止・改ざんによる損失や信用毀損を避ける観点で有効です。
参考・出典(主要ソース)
- (※1) 令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005-a.pdf - (※2) 1:5の法則 | 用語辞典 | BizDrive(ビズドライブ)
https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/word/1-5-law.html - (※3) WordPress ECサイトのセキュリティ対策完全ガイド(株式会社Welcart)
https://www.welcart.com/archives/tips/tips-20250409 - (※4) WCEX Auto Delivery(株式会社Welcart)
https://www.welcart.com/archives/2647.html - (※5) WooCommerce Memberships(WooCommerce)
https://woocommerce.com/document/woocommerce-memberships/ - (※6) The Subscription Reports WooCommerce doesn’t show you(Metorik)
https://metorik.com/analytics-reports/woocommerce-subscriptions - (※7) WooCommerce Subscriptions(WooCommerce)
https://woocommerce.com/products/woocommerce-subscriptions/ - (※8) 通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(消費者庁)
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/guidelines.html - (※9) Welcartクラウド(株式会社Welcart)
https://www.welcart.com/welcart-cloud



