
ECサイト成長戦略:
「守りの離脱対策」と「攻めのアップセル&クロスセル」
ECサイトの成長の鍵は「カートに入れた後の体験」にあります。国内調査によれば平均カゴ落ち率は63.3%にも達し、これは現在の売上の約2.7倍もの機会損失につながっています。離脱の壁を取り除き、さらにアップセルとクロスセルの仕組みを整えることで、売上と顧客満足度を同時に高められます。
ECサイトの成長を左右するのは、「商品をカートに入れる前後の体験」です。
どんなに魅力的な商品があっても、送料や決済でつまずけば購入は見送られてしまいます。国内調査では、平均カゴ落ち率 63.3% という厳しい現実が出ており(※1)、まずはこうした「離脱の壁」を取り除くことが欠かせません。
一方で、ただ離脱を防ぐだけでは成長は頭打ちになります。次の一手は「アップセル」と「クロスセル」。お客様がより満足できる選択肢や関連商品に出会える仕組みを整えることで、売上はもちろん顧客体験そのものが豊かになります。
本記事では、まず“守り”としての離脱対策をデータに基づいて整理し、そのうえで“攻め”としてアップセル/クロスセルをどう実装するかを、Welcart開発チームの知見を交えてわかりやすく解説します。
今日からすぐに試せる具体的なステップも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
まずは離脱の現状を押さえよう
お客様が購入をやめてしまうのには、必ず理由があります。
頼できるデータを基に、日本のECサイトが直面する課題を客観的に把握しましょう。
カゴ落ちの衝撃的な実態:売上の2.7倍もの機会損失
自社サイトの売上機会をどれだけ逃しているか、ご存知でしょうか。
国内552サイトを対象とした調査によると、カート放棄率(カゴ落ち率)の平均は63.3%にも上ります。
さらに、このカゴ落ちによる機会損失額は、サイトの現在売上の約2.7倍に達するとの試算も出ています(※1)。
つまり、カゴ落ち対策は、ECサイト運営において最も費用対効果の高い“最優先”施策の一つなのです。
では、なぜお客様はカートに商品を入れた後に離脱してしまうのでしょうか。

お客様が「購入をやめる」本当の理由
予期せぬコストの発生
離脱理由の46.1%
離脱理由の最多は「送料や手数料などの追加費用が高い」で、実に46.1%を占めます。
特に、送料無料だと思っていたものが最終画面で有料だと判明する「コストのサプライズ」は、顧客の購入意欲を著しく削ぎます(※2)。
決済方法への不満
55%以上が離脱
「普段利用している決済方法がない場合、購入せずに離脱する」と回答した消費者は55%以上にのぼります。
クレジットカード決済が主軸であることに変わりはありませんが、PayPayなどのコード決済の利用も拡大しており、決済手段の過不足が直接離脱に繋がります(※3)。
購入の先延ばし
離脱理由の29.8%
「後で購入しようと思った」という理由も約3割を占めます。
これは、サイトの使いにくさや会員登録の手間が、顧客に「今はやめておこう」と判断させている可能性を示唆しています(※2)。
ECサイトの離脱対策:データが示す3つの優先順位
離脱を防ぐには、まずその原因を取り除くことが最優先です。
国内のデータを見ると、効果が大きい対策は次の三つに絞られます。
売上と顧客満足度を両立するアップセルとクロスセル
離脱対策で“買いやすい環境”を整えたら、次のステップは「アップセル」と「クロスセル」です。
これは商品一覧/商品詳細、カート投入の前後、チェックアウト、購入後メールなど各接点で実施できる設計で、顧客の不安や迷いを減らし、より良い購買体験を後押しします。
単なる販売テクニックではなく、顧客の「後悔コスト」を減らす“おもてなしの情報設計”と言えます。
アップセル(Up-selling)とは?
お客様が検討中の商品よりも高価格帯の上位モデルや、より充実したサービスを提案する手法です。
「より良い選択」を提示することで、顧客満足度の向上と顧客単価の上昇を同時に狙います。

クロスセル(Cross-selling)とは?
お客様が購入を決めた(あるいは検討中の)商品と関連性の高い別の商品を「あわせ買い」として提案する手法です。
顧客のニーズを先回りして満たすことで、利便性と満足度を高めます。

失敗しない!効果的なアップセル戦略
アップセル成功の鍵は、「お客様に自ら『こちらの方が良い』と選んでもらう」ための自然な導線設計にあります。
アップセルを成功させる3つのポイント

選びやすい3段階
(Good-Better-Best)の提示
商品を3つの価格や仕様で提示し、狙いたい中位・上位モデルが「ちょうど良い選択」だと感じられるように構成します。
単なるスペックの数値だけでなく、「このプランなら、こんな良い体験ができます」というベネフィット(便益)に翻訳して伝えることが効果的です。

「価値の翻訳」で価格差を正当化する
「+3,000円で、バッテリー駆動時間が2倍になり、外出先での急な電池切れの心配がなくなります」のように、価格差がもたらす体験差を具体的に示します。

限定性や保証で背中を押す
「在庫僅少」「延長保証付き」「今だけの乗り換え特典」など、安心材料や機会損失を回避できる点を自然に添えることで、顧客の決断を後押しします。
【Welcartでの実践ヒント】アップセル導線の構築

SKUの戦略的配置
WelcartのSKU(商品オプション)名に「【人気No.1】2年保証付き」や「【業務用】30%増量パック」のように、具体的なベネフィットを記載しましょう。

UIの最適化
拡張プラグイン「WCEX SKU Select」を導入すると、SKUをプルダウンやラジオボタン形式に統一し、カートボタンを1つに集約できます。これにより、顧客の比較検討の負担を下げ、“選びやすさ”を格段に向上させます。
売上を底上げするクロスセル戦略
クロスセルは、顧客の潜在的なニーズに応えることで、「ついで買い」を自然に促し、売上を安定的に底上げします。
クロスセルを成功させる「 場所 × タイミング × 関連度 」

場所
(どこで提案するか?)
- 商品ページ: 「この商品と一緒に購入されています」
- カート投入直後: 「〇〇の買い忘れはありませんか?」(軽量なポップアップなど)
- カート/チェックアウト画面: 「あと〇〇円で送料無料」の案内に沿った消耗品など
- 購入完了後: サンキューメールで、購入品の利用価値を高める関連商品を案内

タイミング
(いつ提案するか?)
顧客の主なアクション(カート投入や注文完了)の直後に、1~3点に絞って提案するのが鉄則です。
多くを提案しすぎると、購入という本筋の妨げになります。

関連度
(何を提案するか?)
購買データや閲覧履歴に基づき、論理的に関連性の高い商品を紐づけることが必須です。「なんとなく」の提案は逆効果にしかなりません。
【Welcartでの実践ヒント】クロスセルの最短ルート

標準機能「関連商品」の活用
商品編集画面の「タグ」に関連させたい商品の商品コードをカンマ区切りで入力するだけで、商品詳細ページに関連商品を表示できます。主要商品ごとに地道に設定することが、サイト全体の売上向上に繋がります。

テーマ機能の活用
Welcartの公式テーマには、アップセル・クロスセルを効果的に表示する機能が組み込まれているものがあります。
例えば、テーマ Welcart Duo では、商品詳細ページやカートページに、デザイン性の高いおすすめ商品欄を簡単に設置できます。プラグインを使わずに、より高度な提案をしたい場合に最適です。
さらに、Duoを活用した具体的な施策については、こちらのTips記事で詳しく解説しています。
施策の効果を可視化する効果測定と改善(PDCA)
施策は実行して終わりではありません。「実行(Do)→ 測定(Check)→ 改善(Action)」のサイクルを回し続けましょう。
追うべき重要指標(KPI)

AOV
(平均注文額)
アップセル・クロスセルの直接的な効果指標。アップセル・クロスセルの直接的な効果指標。

CVR
(購入率)
強引な提案で顧客が離脱していないかを確認する指標。

LTV
(顧客生涯価値)
施策がリピート購入や顧客ロイヤリティ向上に繋がっているかを示す長期的指標。
【Welcartでの実践ヒント】計測の土台作り

受注データ分析の高度化
Welcartの基本的な受注リストに加え、拡張プラグイン「WCEX Reports」を導入することで、より高度な分析が可能になります。期間比較、商品別、会員・非会員別など、様々な切り口で売上データを可視化し、どの施策が効果的であったかを正確に把握できます。

GA4連携の活用
無料の拡張プラグイン「WCEX Google Analytics 4」を導入すれば、商品の閲覧(おすすめ商品の表示を含む)→クリック→カート追加→購入完了といった一連のユーザー行動をセッション単位で計測し、ファネルとして可視化できます。
まとめ:顧客への「おもてなしの情報設計」から始めよう
本記事では、ECサイトの成長に不可欠なアップセルとクロスセルについて、信頼性の高い国内データを基に、その本質から具体的な実践方法までを解説しました。
- 日本のECサイトの現実は、カゴ落ち率63.3%(※1)。
主因は「追加費用(46.1%)」(※2)と「決済手段の不足(55%超の離脱)」(※3)。まずはこの土台(離脱対策)の改善が最優先です。そのうえで、アップセルとクロスセルは「顧客満足を高める成長戦略」として実装していきましょう。 - Welcartなら専門知識がなくても実装可能。
標準機能やテーマ、拡張プラグインの活用で、今日から施策を始められます。 - 成功の鍵は「小さく試して、測って、改善する」こと。
データに基づいたPDCAサイクルを回し続ける企業だけが、成果を上げることができます。
ぜひ本記事を参考に、まずは送料・決済手段の明示といった離脱防止の基盤を整え、「主要な商品に関連商品を3つ設定してみる」という小さな一歩から始めてみてください。
その一歩が、お客様の満足とサイトの未来を大きく変えるきっかけとなることを、私たちは確信しています。
参考資料
- (※1) 株式会社イー・エージェンシー「ECサイト カゴ落ち率 平均値レポート 2024年」
国内552サイトのカート放棄率、機会損失額、リカバリーメールの効果に関する実測調査。
https://www.submit.ne.jp/cartrecovery/news/20250317 - (※2) ECのミカタ「【2024年版】ECサイトで商品をカートに入れた後の離脱理由調査」
カート離脱理由(送料が46.1%など)や、送料込み表示に対する消費者意識に関する調査。
https://ecnomikata.com/original_news/45662/ - (※3) SBペイメントサービス株式会社「ECサイトにおける決済手段の利用実態に関する調査(2024年)」
希望決済がない場合の離脱率や、年代別の決済利用実態に関する調査。
https://www.sbpayment.jp/news/press/2024/20240718_001374/ - (※4) 消費者庁「『送料無料』表示の見直しについて」
物流の「2024年問題」に関連した、送料無料表示の考え方と事業者が留意すべき事項についての公式見解。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/other/free_shipping/ - (※5) 経済産業省「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
日本のキャッシュレス決済額と比率、決済手段の内訳に関する公式発表(2024年公表)。
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331005/20250331005.html