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Shopifyか、Welcartか。— ネットショップ運営者・制作会社が“正しく選ぶ”ための比較ガイド

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「まずはShopifyで」という声が増えました。Shopifyは世界的に支持され、短期間で“売れる状態”を整えやすい強力なプラットフォームです。
一方で、日本の商習慣やコンテンツ重視の運営を考えると、WordPress上で動くWelcartも有力な選択肢です。

本記事は、運用・集客・日本の実務・拡張・費用・決済の6つの視点から、ShopifyとWelcartの違いと選び方を整理します。

選定の起点 — 何を重視するか

どちらを選ぶべきか迷ったときは、まずこの6つのポイントをチェックしてみてください。

  1. 運用体制(SaaSの“おまかせ”でいくか/WordPressの“自社仕様”でいくか)
  2. 集客スタイル(広告中心か/コンテンツ中心か)
  3. 日本の実務要件(帳票、ギフト、配送日時など)
  4. デザイン/機能拡張(“ひな型”で十分か/どこまで作り込むか)
  5. 費用の増え方(月額で積み上げるか/買い切りで資産化するか)
  6. 決済まわりの仕組みとコスト

運用体制 — 「おまかせ」の安心感か、「自社仕様」の自由度か

サーバー、SSL、基礎セキュリティまで月額プランに含まれ、運用の初期負担が軽いのが魅力です。テーマエディタ(Online Store 2.0)でページごとにパーツ(セクション)を配置し直せるなど、管理画面だけで調整できる範囲も広がっています。

既存のWordPressにそのままEC機能を重ねられます。投稿・固定ページ、権限、下書き→公開の流れなど、普段の更新体験をECにも共通化できるのが利点です。(製品トップ:Welcart公式

どこから“プロの出番”になる?

両者とも“ひな型(テーマ)”で短期公開は可能です。ただし、次の領域に踏み込むと、制作会社/開発者のサポートが必要になりやすいのは共通です。

  • 完全オリジナルのUI・演出(テンプレの枠を超えるレイアウトや体験)
  • 複雑な業務ロジック(受注分岐、社内承認、在庫・配送条件の複合など)
  • チェックアウトの本格最適化(UIの深い拡張や配送/決済ロジックの一部はShopify Plus前提の領域がある)
  • 外部システム連携の自動化/ヘッドレス化(API活用が前提)
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制作を頼むときの“人材と費用感”

日本でパートナー選定や内製化を考える際に効いてくるのが人材の裾野です。WordPressは全Webの約43%を占める圧倒的シェアで(既知CMS中では約61%)、制作会社・フリーランスの母数が大きく、相見積もりで品質とコストのバランスを取りやすい環境があります。(※1)
また、日本各地にWordPress Meetupが多数存在し(国内チャプターの公式一覧あり)、コミュニティに支えられた日本語の知見と人材供給が厚いのも特徴です。

Shopifyにも日本拠点の公式パートナーディレクトリが整備され、最適化された実装を依頼しやすい環境です。高度要件ではアプリ費用+制作費が並走しやすいため、要件と予算の線引きが重要になります。

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まとめ:

最初はどちらも“ひな型”で十分です。規模が大きくなるほど“ちゃんと作る”開発投資が効いてきます。日本での人材調達と相場の幅という観点では、WordPressは選択肢が多くコスパを設計しやすい傾向があります(案件難易度と品質要件で変動します)。

集客スタイル — 広告中心か、コンテンツ中心か

広告・SNS・アプリ連携を起点にスピーディーに売る流れと相性が良いのがShopifyです。InstagramやFacebookといったSNSとの連携や、Googleショッピング広告との統合など、外部プラットフォームを活かして短期的に成果を出す仕組みが整っています。

一方で、コンテンツを使った集客については、標準でブログ機能が搭載されているものの、編集体験や分析・柔軟な設計は「ブログ特化CMS」ほどではないというのが一般的な見方です。もちろんアプリの導入で拡張は可能ですが、本格的なコンテンツマーケティングを軸にするには工夫が必要です。

WelcartはWordPressのCMS力をフルに活用できるため、コンテンツ→検索流入→購入という導線を同じ管理画面内で一気通貫に作り込めるのが強みです。記事・固定ページ・EC機能が一体化しているため、更新作業も1つのワークフローに統一できます。

WordPressは世界で最も使われているCMSであり、全Webサイトの約43%が採用しています(W3Techs、2025年9月5日調査) (※1)。この裾野の広さは、制作者・運営者の双方にとって安心材料となります。

今後ますます重要になるコンテンツマーケティング

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広告やSNS経由の集客は即効性がある一方、費用依存が避けられません。広告費が高騰する中、持続的に顧客を獲得していくにはオウンドメディア型の集客(=コンテンツマーケティング)の比重が高まっています。検索から自然に訪れるユーザーを育て、記事や体験談を通じて商品に興味を持ってもらう。この流れは、広告に頼らない安定した集客基盤につながります。

さらに近年は、SEOとAIの進化がこの流れを後押ししています。

  • SEOはかつてのような「キーワードの詰め込み」や外部リンク数では評価されにくくなり、GoogleのEEAT(専門性・権威性・信頼性・経験)が示すように「ユーザーにとって役立つ情報かどうか」が軸になっています。(※2)
  • 生成AIの普及により、ユーザーが検索以外で情報を得る機会も増えています。AIが参照・要約する情報源として選ばれるのは、表面的な商品説明ではなく、具体的な体験や独自の知見を含むコンテンツです。

まとめ:

つまり、テクニックではなく中身です。質の高いコンテンツを積み上げることが、SEOにもAI時代の情報流通にも強い資産となります。
この点で、WordPress+Welcartの編集体験はコンテンツ発信と購買導線を一元化でき、“広告に頼らない集客基盤”を作るのに適した選択肢となります。

日本の実務要件 — 当たり前にできてほしいこと

日本向けECでは、帳票・ギフト・配送日時などの“見えない品質”がCVRや満足度に直結します。

帳票(請求書・納品書・領収書/インボイス)

標準の帳票はシンプルです。日本のインボイス様式に合わせるには帳票アプリの導入が一般的です。(例:Order Printer Pro $10〜/月、注文数により$20〜/月の階層あり/Quick Order Printer|かんたん帳票出力  $9/月)。

管理画面から見積書/納品書/請求書/領収書のPDFを発行できます(インボイス対応Tips)。追加コストなしで運用できます。

ギフト(のし/ラッピング/複数配送先)

のし・ラッピングや1注文で複数配送先(マルチシップ)はギフト系アプリの採用が一般的です。(例:All in gift $9.90/月、 など)。

商品オプションで、のし・ラッピング等の選択項目を標準設定できます(必要に応じて有料化や高度化は拡張で対応)。複数配送先は買い切りの拡張プラグインWCEX Multiple Shipping 税込27,500円)で実装できます。

配送日時指定

標準にはないため、配送日時アプリを追加します。(相場は$5〜$19.80/月など)。

お届け希望日・時間は標準機能です。営業日カレンダーや配達日数を設定し、最短お届け日を自動計算して表示できます。

デザイン/機能拡張 — “ひな型”で素早く、必要に応じて作り込む

どちらも「テーマ(=デザインのひな型)」を使えば、ロゴや色、フォント、ページ構成などを管理画面から調整し、短期間で公開まで進められます。ここから先の拡張の仕方に違いがあります。

  • デザイン:テーマエディタ(Online Store 2.0)でページ単位にパーツ(セクション)を追加・並び替え可能です。基本的な変更はノーコードで進められますが、オリジナル演出やレイアウトの大幅改修にはLiquidや制作会社の力が必要です。
  • 機能:レビュー、ギフト、会員ランク、サブスクなどはアプリ追加で対応できます。管理画面から安全に導入できますが、積み重なると月額課金がかさみます。高度なチェックアウト改修は「Checkout Extensibility」やShopify Plus限定の機能に依存します。
  • デザイン:Welcartは独自のテンプレートを利用して動作します。そのため、WordPressのテーマを選ぶ際には、Welcart用に調整されたテーマを利用するのが基本です。ただし、このテンプレートを使えば既存のWordPressテーマをベースに組み合わせたり、オリジナルテーマを制作して独自のデザインを構築することも可能です。ブロックエディタやテーマカスタマイズと組み合わせることで、既存サイトと同じUI感覚で編集でき、柔軟な作り込みができます。
  • 機能:標準で日本の運用に必要な機能(帳票、配送日時指定など)を備えており、追加ニーズは拡張プラグイン(多くは買い切り)や開発投資で対応。買い切り中心なので一度導入すれば恒常コストは増えにくく、自社仕様に寄せやすい設計です。

費用の増え方 — 月額で広げるか、買い切りで資産化するか

具体例で「広げ方」とコストの違いを見てみましょう。
どちらもテーマで素早く公開し、足りない機能はアプリ/拡張や開発で満たしていく考え方は同じです。違いは広げ方(マーケットプレイス中心か、買い切り+開発か)とお金の出どころ(月額か、資産化か)です。

例1:定期購入(サブスク)

定期購入はAppstle SubscriptionsSeal Subscriptions などアプリ追加で実装できます。

WCEX Auto Deliveryを買い切りで導入できます。初期投資=資産化の色合いが強く、長期ランニングを抑制しやすいのが特徴です。

例2:デジタル商品・会員制(ダウンロード販売/有料会員)

デジタル商品の配布は Digital Downloads などアプリ追加で実装できます。(無料/有料アプリあり)

会員制・メンバー限定エリアは Bold Memberships など月額サブスク型アプリが主流です。

WCEX DL Seller(継続課金・ダウンロード販売)を買い切りで導入できます。ダウンロード商品/会員課金(年額・月額)までWordPress内で一気通貫に構築できます。

まとめ:

Shopifyは“月々の利用料を足していく”構造です。Welcartは“一度の投資で資産にしていく”構造です。長期的なランニングの作り方が根本的に異なります。

決済まわりの仕組みとコストの違い

決済方法によってかかる手数料が変わります。

  • Shopify Payments を利用する場合は、プランに応じたカード処理料のみで、外部決済手数料は免除されます(国内カードなら Basic 3.55%/Shopify 3.4%/Advanced 3.25%)。
  • ただし、コンビニ決済やキャリア決済など日本特有の手段は外部ゲートウェイ(KOMOJU等)を経由する必要があり、この場合は「ゲートウェイ手数料+Shopify外部決済手数料(Basic 2.0%/Shopify 1.0%/Advanced 0.6%)」が重なります。
  • 売上が伸びるほど外部決済利用分のコストインパクトが大きくなるため、どの決済手段を主力にするかがランニングコストに直結します。

決済代行会社と直接契約する方式です。

  • かかる費用は各決済会社の手数料のみ。プラットフォームに対して追加の外部決済手数料が発生することはありません。
  • クレジットカード、コンビニ、代引き、銀行振込など、日本の主要手段に標準対応しており、利用者側の手数料構造はシンプルです。( Welcartで利用できる決済サービス
  • その代わり、サーバーやセキュリティ対応は事業者側での設計が必要になります(Welcartクラウドを使えば、SaaS型の安心感も得られます)。

まとめ — “どちらが優れているか”より“自社に合うか”

  • 短期間で立ち上げ、広告・SNS・アプリ連携を活用して早く売る流れを作りたい
  • 越境や将来の大規模化を見据えて、拡張しやすいプラットフォームを選びたい
  • サーバーやセキュリティ管理をできるだけ任せたい(SaaS型の安心感)

※アプリ利用料や月額費用は積み重なっていくので、全体のランニングコストを見ながら判断が必要です。

  • コンテンツ(WordPress)を軸に、検索からの集客を育てたい
  • 日本特有の帳票・配送日時・ギフトオプションを、追加費用を抑えて長く運用したい
  • 既存のWordPress運用を活かし、記事更新やユーザー権限を共通化したい

※ 拡張は買い切り型が多く、一度導入すれば“自社の資産”として積み上げやすいのが特徴です。

最後に大事なのは、「自分たちの事業がどこに重心を置くのか」です。
スピードや越境対応を優先するならShopify、コンテンツと日本仕様を重視するならWelcart。この記事が、Shopifyを検討している方がもう一つの選択肢としてWelcartを知るきっかけになり、またShopifyから移行を考える方が判断の材料を整理する助けになれば幸いです。

参考・出典(主要ソース)

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